2026.3-9
「世界で咲き誇る日本のホッケー」-さくらジャパン、世界に挑むための『READY』
HOCKEY
時速150キロを超える球が飛び交い、瞬時の判断と緻密なパスワークが交錯するフィールドホッケー。2024年、世界の頂点に挑む経験を経て、ホッケー女子日本代表「さくらジャパン」は今、かつてない変革の時を迎えている。
経験豊富なベテランたちが一線を退き、次世代がチームの核へとシフトする中で、彼女たちが追い求めているのは、華やかなプレーの裏側にある「ベーシックスキル」の徹底的な磨き上げと、逆境を糧にする不屈の精神にある。
新しいシーズン、そしてその先にあるアジアの頂点、そして世界を見据え、3人の選手が語った『READY』という名の覚悟に迫る。
「仲良し」の先にある緊張感 — キャプテン・島田あみる選手
新キャプテンとしてチームを牽引する島田あみる選手は、これまでの「一体感のある仲の良いチーム」という良さを認めつつも、さらなる高みを目指すために「切磋琢磨し、緊張感を持って高め合える集団」への進化が必要だと言う。
彼女がここまでストイックに頂点を見据える背景には、東京大会に向けた代表の最終選考での落選という、深い挫折があった。
「落選の知らせを聞いたとき、涙が止まりませんでした。その時、私は代表で闘いたかったんだという気持ちに気が付きました」この日を境に、彼女は自分の足りない部分を一から見直し、誰よりも自分自身を追い込むことで、再び代表として世界と戦うフィールドに帰ってきた。
島田選手が考える世界との最大の差、それは「止めて、出して、走る」という極めて基礎的な技術の精度にある。世界のトップチームは、この一連の動作に一切の無駄がなく、ミスが極めて少ない。
自身の長所であるスピードに甘んじることなく、緩急の使い方や相手をいなす技術をゼロから追求する姿勢。その妥協なき『READY』こそが、キャプテンとしての背中をより力強いものにしている。
「何度でも立ち上がる、恩返しのフィールド」—田中彩樹選手
「これまでの競技人生は、だいたい悔しいことばかり」と語る田中彩樹選手の歩みは、苦労や怪我との戦いの連続だったと言う。
小中学生時代は一度も全国大会に出場できなかった。高校生時代にも骨折で代表から外れてしまった。日本代表入りを果たしてからも、前十字靭帯断裂といった大怪我に見舞われ、そのたびに「また怪我か」という心ない言葉にも晒されたという。
精神的に追い詰められ、「もうやめよう」と何度も思うなか、そのたびに彼女を繋ぎ止めたのは、家族やチームメイト、そしてリハビリを共にした仲間たちの存在だった。
かつては先輩に支えられる立場だった田中選手は今、自らがチームを引っ張る存在として「若いメンバーがいかに楽しみながら全力でプレーできるか」を考えている。
150キロを超えるシュートがゴールネットを揺らす快音にのめり込んだあの日の情熱を胸に、彼女は今、自らのプレーを通じてホッケーの魅力を日本中に伝えるという使命感に燃えている。
守備も攻撃も担うミッドフィルダーとして、決定的なチャンスを作り出すことにこだわり抜く。それが、彼女を支えてくれたすべての人々へ恩返しの『READY』だ。
「メンタルと技術で世界に挑む」—村山裕香選手
フォワードとして得点にすべてを懸ける村山裕香選手は、海外選手との圧倒的な体格差という物理的な壁に真っ向から立ち向かっている。
海外に行けば大人と子どもほどの差を感じる対戦相手に対しても、「相手が強いと思った時点で負け」という強固なメンタルを武器に、その懐へ鋭く飛び込んでいく。
昨シーズン、掴みかけたタイトルを逃した際には「決めるべき時に決めきれなかった」フォワードとしての責任を痛感した。その悔しさを晴らすため、彼女はオフシーズンを徹底的なフィジカルトレーニングに費やし、足りない部分を一つひとつ埋めているという。
どんなに危険な場面でも恐れず立ち向かうのは、守備陣が身体を張って守り、中盤が必死に繋いでくれたボールを最後にゴールへ届けるという、役割への誇りがあるからだ。
小さくても負けない。その意志を体現するスピードと決定力に磨きをかけることこそが、村山選手が自分に課した『READY』の形だ。
「世界で咲き誇るための道筋は、基礎の積み重ね」
三人に共通しているのは、世界を驚かせるための準備は、地味で過酷な基礎の積み重ねにしかないという確信だ。
島田選手はベーシックスキルのアップデートを、田中選手は強い気持ちを、そして村山選手は個々が抱える役割の完遂。それぞれの覚悟が結集し、さくらジャパンという一つの力強い幹となって、2028年に世界の舞台で咲き誇る日本のホッケー、そしてその先のメダル獲得へと突き進んでいく。
彼女たちの『READY』は、今この瞬間も、フィールドの熱気の中、開花の時を待っている。


