2026.3-16
「確信を信じて、牙を研ぐ」オリックス・バファローズ、四人の勇士が語る勝利への『READY』
BASEBALL
プロ野球の新シーズンが幕開けを控えた、オリックス・バファローズのキャンプ地には、心地よい緊張感と、それ以上に熱い「再起」への執念が満ちていた。
昨シーズン、思うような結果を残せなかった悔しさは、彼らにとってさらなる高みへと昇るための、最も純度の高いエネルギーへと昇華されている。
彼らにとっての『READY』。それは単なる「準備」という言葉に留まらない。己の弱さを認め、理想を追い求め、一分の隙もない自信を築き上げるまでの、孤独で過酷なプロフェッショナルの生き様そのものだ。
「準備こそが、自信のすべて」— 山崎颯一郎選手と廣岡大志選手が語るプロの矜持
プロ10年目を迎える右腕・山崎颯一郎選手の心には、今も鮮明に残る痛みがある。
中学3年生の夏、自分のピッチングで負けてしまい、全国大会への夢を絶たれたあの日。「申し訳なさなど、色々な感情が混ざったあの感覚は今でも覚えている」と彼は静かに語る。その深い悔恨を乗り越える唯一の術は、ただひたすらに「投げて、投げて、乗り越えていくこと」だけだった。
2025年シーズン、不本意な成績に終わった山崎選手は、再びその「準備」という原点に立ち返っている。
秋のキャンプから磨き続けている新しい球種は、まだ理想の軌道には届いていない。しかし、カウントが進んだ絶体絶命の場面でストライクを取り、打者をねじ伏せるためには、その変化を恐れぬ挑戦こそが必要なのだ。
「準備こそがすべて。心、技、体、そしてデータまで。自分が100%の自信を持って試合に向かえれば、勝つ確率が上がる」。190cmの長身から放たれる剛速球の裏には、こうした緻密な準備と、かつての悔しさを糧にした執念が宿っている。
その「準備への執念」において、廣岡大志選手もまた、共鳴する魂を持っている。
プロ11年目にして初めて規定打席に到達し、「やっと野球選手になったなと感じた」と振り返る廣岡選手にとって、昨季は一つの転換点となった。
周囲に何を言われようとも、最後にやるのは自分だという強い意志。それを支えているのは、「準備の段階で絶対に手を抜かない」という極めてシンプルな、しかし最も困難な規律だった。自分の中で「100%やりきった」という確信を持ってグラウンドに立つこと。その揺るぎない自負こそが、彼に野球を本能的に楽しむ勇気を与えている。
「言い訳を捨て、変化を受け入れる」—宗佑磨選手と山下舜平大選手の覚悟
一方で、三塁の要である宗佑磨選手は、自らの感情をコントロールする術を研ぎ澄ませている。
昨シーズンは「悪いこと、悔しいことの方が多かった」と振り返り、「シュンとするよりは、それを逆に怒りの感情に変えて、パワーにする」と彼は言う。その巨大なパワーを制御し、前に進むためのエネルギーに変換している。
彼の『READY』は、徹底した自己との対峙から始まる。「人生一回きり。今の自分が本当に全力で取り組めているのか。言い訳や保険をかけるような生き方はしたくない」。自分を深めていくための手段として野球を捉える彼は、勝つために必要なのは「根性」だという。ただ、昔からの“根性論”とは違い、彼のいう「根性」とは「怖いところに突っ込んでいけるかどうかの覚悟があるか」だと断言する。
さらに、彼は孤高であることだけを求めない。仲間とのコミュニケーションを通じて相手を理解し、同時に自分を知ることで、チームとしての『READY』を完成させようとしている。
そして、次世代のエース候補・山下舜平大選手は、自らの肉体と技術を「シーズン仕様」へと大胆に作り変えている。
「進化するためには変化が必要。去年の反省を繰り返し、同じ過ちはしたくない」という強い意志が、彼を新たなトレーニングや技術的な改革へと突き動かしている。
キャンプ期間中、彼は一日のすべてを野球に捧げ、課した課題を一つひとつクリアすることに貪欲だ。「努力を継続すれば、結果はその先に必ずついてくる」という自身の確信を信じ、目の前の結果に一喜一憂することなく牙を研ぐ。マウンドに立った瞬間、「目の前の相手を潰しに行く」という強烈な闘争心を爆発させるために、彼は今、完璧な準備を積み重ねている。
「勝利の先にある、まだ見ぬ景色へ」
四人のプロフェッショナルが語ったのは、単なる新シーズンへの抱負ではない。それは、アスリートとして、そして一人の人間として、いかに自らを律し、極限の舞台に備えるかという哲学の表明である。
山崎選手は投げ方を真似されるような憧れの選手を目指し 、廣岡選手は子どもたちに「野球を思いっきり楽しんでほしい」と願う。宗選手は自己を深めるために走り続け、山下選手はチームに勝利を運ぶためのローテーション死守を誓う。
個々の想いが、オリックス・バファローズという一つのチームとして重なり合う時、そのエネルギーは私たちの想像を超えていくだろう。
リーグ優勝、そして日本一。その輝かしい頂へと続く道は、華やかなスタジアムの照明の下ではなく、静寂の中で自らを追い込み続ける、この「妥協なき準備」の瞬間の積み重ねだ。
彼らの『READY』は、もう始まっている。

