2025.11-14
『未来は「継続」の先にある』山下舜平大選手が語るオフシーズンを制する者の哲学
BASEBALL

シーズン中の喧騒が遠のき、アスリートが自身と深く向き合うオフシーズン。その過ごし方が未来を大きく左右する。オリックス・バファローズの山下舜平大選手は、この期間を「野球中心に生活する時間が最も濃い」と捉え、自らの成長の糧としてきた。

2023年にプロ初登板で開幕投手を務め、新人王にも輝いた若き剛腕だが、今シーズンは開幕前に腰の怪我を発症し、長期間に渡って戦線を離脱した。リハビリや孤独なトレーニングと向き合う中で、彼が何を考え、何を見据えているのかに迫る。

試行錯誤の中にこそ「進化」はある

 

アスリートにとって怪我は避けては通れない試練だ。山下選手は、今季の開幕前に自身4度目となる腰の怪我で戦線を離脱した。

「何をしたらいいかはまだ自分とお医者さん、トレーナーと話し合いながら決めています。正解はまだわかっていません」

トップアスリートでさえ「正解はわからない」と口にする。しかし、それは諦めではなく、あらゆる可能性を探りながら自分だけの答えを見つけ出そうとする、真摯な探求心の表れでもある。

この試行錯誤の過程で、彼は自身の身体と深く向き合ってきた。

「柔軟性と体幹周りの強化はケガに対するリハビリとしてやりました。それ以外でも、普通にウエイトトレーニングをできる範囲でずっとやっています」

チームがクライマックスシリーズ進出に向けた争いを続けるなか、投げられない時期であっても、できることはある。地道なトレーニングを続けることが、やがて目に見える成長として現れる。

「重いものを上げられるようになるとか、去年よりも数値が上がるなど、目に見える成長を意識しながらトレーニングしています」

小さな成功体験が、次の一歩を踏み出す力になる。完璧な答えがないからこそ、昨日までの自分を超えるために挑戦し続ける。そのプロセスの中にこそ、真の進化は存在する。

「自分で考える」オフシーズンが、アスリートを本物にする

 

ペナントレースが閉幕した11月からキャンプインを迎える2月まで、濃密なトレーニングに打ち込めるオフシーズン。山下選手にとって、その時間の過ごし方はプロになってから変化したという。

「学生の頃と違って、今は自分で1日の流れを決めます。トレーナーのところに行って、自分でメニューを探すこともあります。自分で考えて動くのが一番大きな変化ですね」

与えられたメニューをこなすだけではない。その年の課題や進化すべきポイントに合わせてテーマを設定し、「開幕に合わせるのか、夏頃を目標にするのか」といった長期的な視点からピークを逆算する。そのすべてを自らで考えて動く。

アスリートとしての自立は、自らの意志で未来をデザインすることから始まる。課題を見つけ、情報を集め、計画を立て、実行する。そのサイクルを主体的に回し続けることが、成長の角度を決定づける。

最強の武器は「継続する力」

 

孤独なオフシーズンのトレーニングは、精神的な強さを問われる。しかし山下選手は、その時間を「普通に好きなことをやっている感覚」だと話す。

「トレーナーのメニューでしんどい部分もありますが、嫌だとは思いません」

このポジティブなマインドは、「自分のどんな姿をイメージするか」という明確な目的意識に支えられている。

「自分は試合で活躍している姿を想像して追い込みました」

鮮明な成功のイメージが、厳しいトレーニングを乗り越えるためのエネルギーとなる。そして、その土台にあるのが、彼の哲学の核心ともいえる「継続」の重要性だ。

「調子がいい時でもブレないために、自分を律して整えることです。少し新しいことも取り入れますが、効果が出るのは長期なので、継続することが一番重要だと思います」

新しいトレーニング方法や理論は次々と現れるが、それに飛びつくだけでは真の力は身につかない。自分に必要だと信じたことを、淡々と、着実に続ける。その先にしか、本当の変化は訪れない。

「練習を続けているだけでは結果は出ないので、レベルが上がった瞬間を意識して続けることが大事です」

日々の練習の中に潜む「進化の瞬間」を見逃さず、それを自信に変えていく。その繰り返しが、マウンドでの余裕や平常心を生み、圧倒的な投球で勝利を手繰り寄せる。

「自分のことを信じることで未来を作ることができると思います。むしろ、信じることができないと続けられないですから」

強くなる秘訣を問われても、彼の答えは驚くほどにシンプルだ。自分を信じ、目標を見据え、ストイックにやるべきことをやり続ける。その根底には、揺るぎない信念がある。

9月、シーズンの最終盤で1軍のマウンドに復帰を果たした。3試合に先発、約20イングで奪った三振は30個を数えた。山下舜平大という一人のアスリートが示す道は、その愚直なまでの継続の先にこそ、確かな未来が拓けることを証明している。

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