2024.11-05
スプリントコーチ・秋本真吾氏が教える「速く走るためのポイント」
RUNNING

2024年10月12日から3日間、長野県・菅平で「UNDER ARMOUR WOMEN’S SOCCER CUP(U-18)」が開催された。この大会は、アンダーアーマーが「1% FOR THE ATHLETES」という「UAリワードメンバー」の購入金額の1%をスポーツに還元するという取り組みから、サポートが少ない女子サッカー選手たちに戦いや学びの場を提供するために行っている。

全国から集まった8チーム、203名の選手たちが真剣勝負を繰り広げ、女性アスリート特有の課題についての講義やスプリントに関する指導を受けた。今回は大会2日目に行われたスプリントコーチ・秋本真吾氏によるスプリント講座の模様をお届けする。

速く走る=前傾姿勢は間違い

スプリント講座で秋本コーチが学生たちに伝えた、速く走るためのポイントは次の3つだ。

1、正しい姿勢で走る

2、正しい脚の着き方

3、正しい腕の振り方

これまで多くのアスリートを指導してきた秋本コーチによれば、男女問わずサッカー選手は速く走ろうとすると無意識に前傾姿勢になりやすいという。骨盤を前に傾けると速く走れそうに感じるが、実はこれは間違いだ。速く走るためには、脚で地面に強い力を加える必要がある。しかし、前傾姿勢だと脚が後ろに回る動きになり、地面を蹴るような形になるため、力を伝えにくくなってしまう。

理想は、足が地面に着いた瞬間に大きな力を加えることだが、前傾していると脚が上げにくくなり、地面に大きい力を加えることが難しくなる。更には、脚が身体の後ろで回転してしまい、姿勢が前のめりになることで速度も出にくくなる。さらには筋肉が攣りやすくなることも。秋本コーチは「走っていて脚が疲れやすい人は、正しいフォームで走れていない可能性が高い」と指摘する。

まず速く走るためには、正しい姿勢を保つことが重要だ。確認方法は簡単で、手を腰に当てて掌が地面と平行になるようにする。これが正しい骨盤の位置だ。この状態でゆっくり足踏みをすると、膝が骨盤の高さまで上げやすくなる。しかし、前傾姿勢だと骨盤が邪魔になり脚が上がりにくくなる。頭から棒が刺さっているようなイメージで走ると、正しい姿勢を保ちやすい。

ケンケン・両脚ジャンプで正しい脚の着き方を知る

2つ目のポイントは、地面に大きな力を伝えるための「正しい脚の付き方」。秋本コーチによれば、正しい脚の着き方を学ぶにはケンケンが有効だという。ケンケンをすると、身体の真下で一番力が入る位置に自然と着地するが、走りも同じで、力がしっかり入る位置で着地することが速く走るための鍵だ。

練習方法は、右足で10回、左足で10回ケンケンしながら少しずつ前進し、その後ジョギングをする。こうすることで、正しい脚の着き方の感覚を身につけることができる。慣れてきたら両脚5回ずつに減らしてジョギングを続けよう。重要なのは、速く走ることよりも正しいフォームを意識すること。スピードを出しすぎると骨盤の位置も含めてフォームが崩れてしまうため、正しい形で走れているかを常に意識することが大切だ。

速く走るためのスピードは、「脚の回転の速さ」と「歩幅」の掛け算で決まるが、このバランスを取らなければ最大化はできない。秋本コーチによれば、サッカー選手は歩幅が大きくなりがちで、その結果、踵から脚をついてしまい、スピードが落ちるだけでなく、ハムストリングや膝裏の肉離れのリスクも高まってしまうようだ。

正しい姿勢やケンケンで学んだ「身体の真下で着地する」感覚を意識すると、自然と踵で着地することが少なくなる。さらに、縄跳びをするように両脚を肩幅に広げてジャンプしてみると、足裏の前半分で着地していることに気づくはずだ。これは、アキレス腱のバネを使っているためで、この動きを走りに取り入れると、前へ進む推進力が増し、結果として脚の回転が速くなり、ストライドも伸びる。

この感覚を意識して、その場で両脚ジャンプを5回行い、ジョギングをしてみよう。

ケンケンは正しい脚の着き方を感覚的に学ぶことができる。足裏の前半分で着地していることが分かるはずだ。

縄跳びは最高のトレーニング

つま先での着地を意識して走ると、足裏やふくらはぎに負担を感じることがあるかもしれない。それは筋力を強化する必要があるからだ。秋本コーチによれば、縄跳びはその筋力強化に最適なトレーニングだという。縄跳びは

1、ふくらはぎ・足裏の筋肉の強化

2、全身のコーディネーション能力向上

3、足首の筋力強化による捻挫の防止

と、様々な効果を見込めるトレーニングだ。特に、腕を大きく使ってジャンプすることで脚への負荷が増し、さらなる強化につながる。同じ時間ランニングをするよりも脂肪燃焼効果も高く、秋本コーチは日常的な練習に縄跳びを取り入れることを勧めている。

 

大きく腕を振ってスピードを出す

3つ目のポイントは「正しい腕の振り方」。姿勢や脚の動きに集中していると、上半身が固まってしまうことがよくあるが、腕をしっかり振ることも速く走るためには重要だ。ジャンプで腕を使って高く飛べるのと同じように、走る時も腕の振りがスピードに繋がる。特に女子選手は、腕を振るときに肩まで一緒に動かしてしまうことが多いが、腕だけを動かすためには「へその位置を動かさない」ことを意識するのがポイント。

さらに、腕を大きく振ることでスピードが出るが、気をつけるべき点は「後ろに振るときに腕が伸びきってしまわないようにすること」。前に振る時には指先が上、後ろに振る時には指先が下を向くようにして、腕の振り方を確認しよう。

腕を後ろに振る時に伸びきってしまわないように意識しよう

「脚の回転の速さ」×「歩幅」のバランスを整えるドリル

秋本コーチは、この3つのポイントを身体に覚えさせるためのドリルも紹介している。

まず、スタート地点から大股で3歩分の位置にマーカーを置き、そこからさらに足の長さ3足分の間隔で6〜7個のマーカーを設置。この間隔は普段の歩幅より狭く、パワーを生みやすい位置に足を置く練習ができる。

この練習では、歩幅を狭くすることだけに集中せず、足を腰の高さからしっかり下ろして大きなパワーを生むことが大事だ。イメージとしては、500mlの缶を踏み潰すように力を加え、その力を前へ進む推進力に変える感覚で走る。

慣れてきたら、マーカーの間隔を少しずつ広げていくと、脚の回転の速さと歩幅のバランスを整えられるようになる。

マーカーは3足分ごとに置く。500ml缶を潰すイメージで脚を腰の高さまで上げよう

技術は基礎体力・筋力の土台の上に成り立つ

1時間の講座で速く走るポイントを伝えた秋本コーチは、最後に「日々の練習の積み重ねが大切」と強調した。「試合の終盤、疲れた状態で正しい走り方を保つのは難しい。だからこそ、日々の練習で身体に正しい動きを染み込ませることが重要だ」と語る。

さらに、「今回教えたのは全て技術の部分。技術は土台の上に成り立つので、基礎体力・筋力の部分を疎かにすると技術も身につかなくなる。一番やりたくない練習が、理想のフォームやプレーのカギを握っていると思って練習をしてほしい」とアドバイスを送った。

『1% For The Athletes』
『1% For The Athletes』

アンダーアーマーの「1% FOR THE ATHLETES」は、次世代育成だけでなく、広くスポーツ振興、スポーツに参加する人々の啓蒙活動、アスリート支援も実施。子ども向けの野球教室など、スポーツに触れる機会やスキルの向上などの体験の場を2023年から提供している。

運営は、アンダーアーマーのアプリを通じた「UAリワードメンバー」の購入金額の1%。つまり、アンダーアーマーの「UAリワードメンバー」になると、その売上の1%がアスリートに還元されるのだ。今回、菅平で行われた「UNDER ARMOUR WOMEN’S SOCCER CUP(U-18)」も「1% FOR THE ATHLETES」がサポートしている。

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上田市とアンダーアーマーが取り組む、「アンダーアーマー菅平サニアパーク」および「アンダーアーマー菅平アリーナ」の活動のレポートは、今後も随時、発信していきます。

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