2024.09-13
自らの手で、未来を切り拓け 世界基準を知る「UA NEXT」開催
BASKETBALL

「プレーの中で、次を見つけて判断する。相手を感じて、自分を表現しよう。後は、お互い声を掛けあって。号令! ワン、トゥ、スリー、NEXT!」

コーチを囲み、声を上げるバスケットボールプレーヤーたち。この12人は、3日前に「UA NEXT」へ参加するため、全国から集まった高校生。急ごしらえのチームの対戦相手は、地元Bリーグのユース「信州ブレイブウォリアーズU18」である。

「UA NEXT」は、アンダーアーマーが主催する、次世代アスリートの育成プロジェクト。 “世界レベルのバスケットボール”を学ぶため、東京と大阪でのセレクションを経て、約130人の中から選ばれた12人である。

そして今、3日間の「UA NEXT」の総仕上げとして行われるエキシビションマッチが、まさに行われている。「UA NEXT」での学びや気づきを糧に、参加者たちは「信州ブレイブウォリアーズU18」の猛攻をかわし、次々とシュートを決めていく。

アンダーアーマーが世界中で実施する、次世代育成イベント「UA NEXT」

「UA NEXT」の指導を担当するのは、鈴木良和コーチ(ERUTLUC代表)。パリ五輪女子日本代表アシスタントコーチ(2017~2021年は男子代表のサポートコーチ)。世界のバスケットを知り、世界基準の教育活動やコーチの育成に取り組んでいる。

「アンダーアーマーがグローバルで実施している、次世代育成のためのイベントが『UA NEXT』です。さまざまなスポーツで行われていますが、今回は、日本のバスケットボールの未来のために、世界基準で戦えることを目指して開催されました。海外を回り、代表チームにも関わり、世界に追いつく課題だと考えているのが、“バスケIQ”や“判断”です。今回の『UA NEXT』で取り組むテーマでもあります」

と語るのは、「UA NEXT」の鈴木良和コーチ。世界基準のトレーニング指導が受けられる「UA NEXT」。試合前には、コートの脇にモニターを設置、選手たちの前日のプレーを振り返り、オフェンスやディフェンスの各フェーズでの動きを細かく分析、NBAのプレーヤーの例も紹介しながら、選手の頭の中でプレーを再構築させるアドバイスを受けている。

鈴木コーチが語る“バスケIQ”や“判断”は、すなわち“頭を使ったバスケ”。相手の動きを客観的に分析し、確実なシュートやブロックへの道筋を判断。勢いに任せての直観的なプレーではなく、駆け引きを伴う緻密なバスケットボールと言い換えることもできよう。

世界のバスケットボールの趨勢は、“考え”“判断する”プレー

鈴木コーチが指導するレベルは、あくまで世界基準。「オリンピックレベルでのレフェリーは、ファールを、接触した事実と、その責任と影響とで見ます。特に重視するのは影響で、必然的に、ぶつかるとか、掴むとか、押すなどのフィジカルなプレーが増えます。そのやり合いを制することが求められます」(鈴木コーチ)。

「個人の能力で点が獲れても、相手がそれ以上の能力ならば、勝つことは難しくなります。しかし、そういう選手の弱い部分を攻めたら、勝つ可能性が高まります。それもIQであり、判断です。バスケットボールは、相手を邪魔し合うスポーツです。相手の弱い状態、悪い判断や準備をちゃんと突く、そういう目線を持ち帰って欲しいと思っています」(鈴木コーチ)

鈴木コーチは、日本の高校バスケの底上げのために、バスケIQ、そして判断が必要だと語る。チームの勝利を優先すると、シンプルなプレーを評価しがちになり、世界のバスケットボールの趨勢である、考え、判断するプレーが疎かになる。鈴木コーチは、そのことに強い危機感を抱いているのだ。

「世界では、U16でも、判断をしつつパフォーマンスを上げることに取り組んでいます。本当に高いレベルのバスケットで、国際試合での勝利を目指すなら、エネルギーがあって思いっきりプレーができる部分と、駆け引きして判断する部分の両軸が必要です。考えすぎて勢いがなくなるのもダメだし、シンプルで勢いはあっても合理的でなければ勝てません。合理的に、かつエネルギッシュなプレーが大事です」(鈴木コーチ)

「UA NEXT」のプログラムは、合理的に、かつエネルギッシュ

ウォーミングアップを指導するのは、宮野結音コーチ(ERUTLUC所属)。“バスケットボールのスキル指導と身体機能の向上を繋げるトレーニングが強み”をまさに具現化したメニューを「UA NEXT」のために用意してくれた。

鈴木コーチが3日間の「UA NEXT」のために用意したトレーニングプログラムは、まさに両者を巧妙に配置している。3対3や4対4でのオフェンスやディフェンスでの先読みと、状況に応じた判断の連続に、参加者たちは頭を抱える。その直後には、1対1で相手の動きを封じるゲーム感覚のプレーを挟み、ボールの奪い合いに興じさせる。こうした緩急の連続で、より高いレベルのプレーを引き出していく。

「UA NEXT」のトレーニングレベルの高さは、準備運動ひとつを取っても唸りたくなる。強豪校の参加者でも、初めて行うメニューと語るほどだ。バスケットボールで酷使する腰背部のストレッチにヨガのポーズを組み込んだり、股関節へのスローなムービングストレッチ、相手の動きを模倣する「ミラー」に体幹の刺激を組み合わせるなど、バスケの実戦的な動きにプラスαを加えた、オリジナリティ溢れるメニューばかりだ。

「目的は2つあります。ひとつは動きのパターンの出力を上げること。そして、身体の使い方に関して動く部分と固める部分(モビリティとスタビリティ)の連携を取ることです。モビリティとスタビリティを発揮させることで、彼らの潜在能力をさらに引き出せます」(鈴木コーチ)

VOICE①:永島楽さん 「これからはバスケットボールの見方が変わると思います」

福岡県立宗像高等学校3年、永島楽さん。「来年のキャプテンに『UA NEXT』を薦めたいです。まだチームの方向性が定まっていなくて悩んでいるようなので。こういう経験をすると、強いチームができると思います」

「レベルが高くて収穫になりました。フィジカル(なプレー)後の判断とか、1対1で抜けない時の判断など、自分に足りないところが明らかになりました。フィジカルやパワーが全然足りないので、卒業までにしっかり身体を作って、大学でも挑みたいと思います」

と語るのは、福岡から参加の永島楽さん。参加するキッカケは、インスタのストーリーだ。軽い気持ちでトライアウトを受けたと話すが、福岡県はバスケットボールの強豪校が多く、県外の選手を知る機会が少ないため、視野を拡げたいと感じていたという。

「福岡の強豪校と(今回の参加者とは)、強さのベクトルが違うことが分かりました。福岡は、カラダを大きくしてゴリゴリと戦うスタイルで、役割がキッチリ決まっています。でも、(今回学んだように)いろいろできるのは強みだと思いました。大柄なプレーヤーでも、しっかり判断してガードのポジションもこなすなんて、今まで考えたことがなかったので、これからはバスケットボールの見方が変わると思います」

VOICE②:村田桂次郎さん 「後輩にも『UA NEXT』を薦めたい」

東京・國學院久我山高校3年の村田桂次郎さん。「MVPに選んでもらえたのは、素直にムチャムチャ嬉しいです。鈴木コーチからの評価もですが、チームメイトも鼓舞してくれたので感謝したいと思います」。

「将来はプロを目指し、まずは大学でプレーをするつもりでいます。高い水準のバスケをしたいと思っていたので、『UA NEXT』に参加しました。自分は身長が低いので、ガードとして、身長の高いセンターと上手く連携できるようになりたいと思っています」

と語る村田桂次郎さんは、今回の「UA NEXT」のMVPに選出。相手を感じて闘争する判断、高いシュート力、そしてチームメイトへの影響力のそれぞれに抜きん出ていたことで、鈴木コーチの高い評価に繋がったという。

「今までやったことのない練習ばかりで、何より“相手をよく見て、考えてバスケをする”ことが学べました。『UA NEXT』には、自分たちのチームの2年生のセンターに参加してもらえたらと感じました。臨機応変な対応にまだ慣れていないので、こういう機会に学んで、周囲に指示が出せるようになってくれたらと思います」

「最高の自分になれるよう、高いレベルでの挑戦を続けて欲しい」(鈴木コーチ)

鈴木コーチが指導するバスケットボールの「UA NEXT」の開催は、2024年で2回目(前回は2023年に沖縄で開催)。

「人生で、一番もったいないのは、“どうせ無理”と自分を低く見積もること。チャレンジしても上手くいかないことはある。けれど、チャレンジすることで、高いステージで活躍できる可能性が生まれます。チームの競技力と個人の競技力は、別。自分を低く見積もらずに、高いレベルでの挑戦を続けて欲しいと思います」(鈴木コーチ)

エキシビションマッチが終わり、MVPの発表も終わったところで、メンバーに語り掛ける鈴木コーチの言葉は、これから地元の高校に戻り、別々のバスケットボール人生を歩んでいく彼らへの最高のエールである。

「Bリーガーのなかには、大学まで二部リーグにいて、練習生として参加する選手もいます。実は、そういう選手も、日本代表の候補に挙がっています。今、何者かはあまり関係ない。これから先、何者になるか。自分のバスケ人生が終わる時、満足したと言えるくらいチャレンジしきって欲しい。最高の自分になれるよう、応援しています。またチャンスがあったら、どこかで一緒にやりましょう。ありがとうございました」(鈴木コーチ)

“すべての人に、スポーツの楽しさと喜びを”

次世代の世界レベルを育てる「UA NEXT」は、アンダーアーマーの「1% FOR THE ATHLETES」によって運営されている。このプロジェクトでは、次世代育成だけでなく、広くスポーツ振興、スポーツに参加する人々の啓蒙活動、アスリート支援も実施。子ども向けの野球教室など、スポーツに触れる機会やスキルの向上などの体験の場を2023年から提供している。

運営は、アンダーアーマーのアプリを通じた「UAリワードメンバー」の購入金額の1%。つまり、アンダーアーマーの「UAリワードメンバー」になると、その売上の1%がアスリートに還元されるのだ。今回、菅平で行われた「UA NEXT」への参加費、滞在費も「1% FOR THE ATHLETES」がサポートしている。

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上田市とアンダーアーマーが取り組む、「アンダーアーマー菅平サニアパーク」および「アンダーアーマー菅平アリーナ」の活動のレポートは、今後も随時、発信していきます。

 

取材・文/大田原透

撮影/向原純一

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