京都ハンナリーズ岸本隆一勝利とは何か京都ハンナリーズ岸本隆一勝利とは何か

2026.09.18
「勝利とは何か」特別編|『想像できる自分を、超えていく。』京都ハンナリーズ岸本 隆一
SPECIAL

メディアが切り抜く断片的なインタビューや、他者によって作られたコンテンツが溢れる現代。アスリート本人が自らの口で、自らの言葉で、自らの内に秘めた「思い」や「考え」をありのままに語る機会は、意外なほど少ない。

だからこそ、私たちは彼らの「生の声」にこだわりたい。

アンダーアーマーのメンバーシッププログラム「UAリワード」アプリ限定コンテンツとして展開する連載シリーズ『勝利とは何か。』。
試合での勝利、目標の達成、自己ベストの更新……。一口に「勝利」と言っても、その価値観やアプローチは選手ごとに千差万別。
様々な競技のトッププロたちが、自分にとっての「勝利」をどう定義し、どのように立ち向かっているのか。

今回は特別編として、勝利とは何か#08『想像できる自分を、超えていく。』京都ハンナリーズ岸本 隆一編を、アンダーアーマーコラムでお届けします。
14年間という長い歳月を過ごし、数々の栄光を築き上げた琉球ゴールデンキングスを離れ、京都ハンナリーズへの移籍を決意。新天地での新たな挑戦をスタートさせる彼にとって、いま「勝利」とは何を意味するのか。

長年築き上げたキャリアの地を離れ、なぜ今、新たな一歩を踏み出すのか。彼の揺るぎない覚悟と、新シーズンにかける熱い想いを、彼自身の言葉で紡ぎます。

MOVIE

京都に来て2週間。正直、ここに来るまでは、やっぱり多少の不安な気持ちもあった。でも、いざこの街に立ってみると、そんな気持ちはすぐに消え、今は「新鮮さ」が100%を占めている。

沖縄と京都じゃ、やっぱり街の作られ方が全然違う。沖縄は海が中心だったけど、京都は大きな川が流れていて、その周りに文化が根付いている感じがする。見る景色、見る景色が本当に新鮮で、すごく楽しんでいる自分がいる。

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この街で戦える「誇り」と「喜び」

14年間過ごした琉球を離れるという決断は、本当に、本当に難しかった。周りに支えられてきた人生だったから、そのみんなの顔が浮かんで、何度も何度も悩んだ。

キングスにいれば、この先自分がどうなっていくか、その姿がある程度、想像できてしまう自分がいた。それは決して悪いことじゃない。むしろ、とても得難い、幸せなことだ。生まれも育ちも沖縄で、家族もいて、このままキングスでプレーし続ける人生は魅力的に感じていた。

でも、そんな僕に、京都ハンナリーズがまったく別の選択肢を示してくれた。この年になって、住む街も文化も、すべてが違う、想像もできない道に挑戦できるチャンスを頂いた。これに、挑んでみたい。その気持ちが、僕を動かした一番の決め手だった。

不思議なことに、京都ハンナリーズとは、昔から縁のようなものを感じている。僕がキングスに入ったばかりのbjリーグ時代、ずっとトップを争っていたライバルチームだった。そして、今の僕のバスケットボールの基礎を作ってくれた、伊佐(勉)ヘッドコーチがいる。そんなチームに、今、自分が加われることを、本当に楽しみにしている。

今まで一緒に戦ってきたチームメイト、球団の方、そして応援してくれたみんな。送り出してくれたみんなの気持ちを背負って、京都で結果を出す。それが、僕なりの感謝の示し方だと思っている。

京都という街に降り立った瞬間、「ああ、移籍したんだ」と実感した。同時に「この街で、この街のチームでバスケができる」そのことに誇りと、そして喜びを感じた。

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期待と冷静さの間で

初めてアリーナでチームメイトと顔を合わせる時は、正直めちゃくちゃ緊張した。どういう話をしたらいいのか。年齢も僕の方が上なので、逆に気を遣わせちゃうんだろうなとか。そういう意味では今までのバスケ人生で一番くらい緊張した。
でも、実際はみんな本当に気さくに話しかけてくれた。本来であれば、移籍してきた僕の方からどんどん話しかけなきゃいけなかったのに、みんなが凄く受け入れてくれて、チームの輪の中にすんなりと入ることができた。

今、僕は今回の移籍に対して、内心すごく期待してるんですよ。自分自身にもそうだし、このチームに、そしてこの街に貢献していこうとか。

だけど今は、その期待を一生懸命に鎮めてる。今までの経験の中で、自分自身に期待をしすぎて、現実とのギャップに苦しんだこともあったから。だからこそ、今は冷静に。でも、心の奥底では、これからのことが楽しみで仕方ない。

“当たり前のことを当たり前にやる”それに勝ることは無い。

バスケを始めたころは、勝利に対する執着みたいなものが本当になくて、昨日できなかったことが出来るようになったとか、試合で一本しか入らなかったシュートが二本決まったとか。純粋に上手くなることだけを考えていた。

中学生になって、ずっと勝てなかったチームに突然勝ったことがあった。チームも個人も特に何かやったわけではなかった。何かを変えて挑んだつもりでもなかった。

ずっと変わらずにやってきたことが積み重なって実力になった時に、最終的に勝てなかったチームより僕たちの方が強くなったんだなって。

案外、上手くいかない時って特別なことをしがちですけど、そうじゃないなっていうことをこの時に感じた。

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Bリーグが開幕した年の初戦。僕らは大きな期待を持って臨んだけど、結果は完敗だった。点差以上に、圧倒的な差を感じた。試合後、負けた以上の敗北感に襲われて、何がいけないのかも分からなかった。
積み上げてきたものが、チームとしても、個人としても、まったく違うと突きつけられた。
でも、そんな時でも、チームの先輩たちは腐らずに、日々の準備やバスケにかける時間を、背中で見せてくれた。その姿を見てこのままじゃいけないんだと思った。

でも、特に変わったことをするんじゃなくて、やるべき事を高い意識を持ってやり続ける。そういうことを改めて周りに教えられて、ここまで来ることができた。

昔から、ただ目の前の試合に「勝つ」ということにこだわっている。今も、もちろんそれは変わらない。でも、勝つことが当たり前になってくると、それが「責任」になって、その責任を果たせた時に、嬉しいと思うようになった。目指すものは変わらないけれど、その意味みたいなものが、少しずつ変わってきたのかもしれない。

「勝てるチーム」の条件

「勝てるチーム」って、一つじゃない。でも、共通しているのは、それぞれの選手の特徴を最大限に生かしているし、それぞれの選手の弱さ、補わないといけない部分を、チームがちゃんと補っていること。それができているチームが、本当に勝つチームだと思う。

そして、本当に強いチームには「余白」がある。
与えられた練習時間が短くて内容が濃い。その「余白」の時間に、個人のスキルアップに充てる選手もいれば、リカバリーに充てる選手もいる。今、自分に何が必要かを、それぞれが「自分たちで考えて動く」。その余白を、当たり前に、上手く使えているチームが、本当に強いチームなんだと思う。

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ポイントガードの視点、勝利を俯瞰する。

試合中は、ポイントガードとして、常に「今、何が上手くいっていて、何が上手くいっていないのか」を考えている。たぶん、無意識にそれをずっとやっていると思う。
それが見えたら、試合中に声をかけて修正することももちろんある。でも、声をかけたほうが良い場合と、そうでない場合がある。

例えば、試合の流れが悪くて、なかなか点が入らない時。そういう時って、結構一人の選手にボールが集まりすぎていたりする。そこで「今は流れが良くないから、ボールを回していこう」と声をかけると、みんながパスを回す意識になりすぎて、チームとしてゴールに向かう「迫力」とか「怖さ」がなくなってしまうことがある。
そんな時は、何も言わずにプレーセットを変える。そうすると、一人ひとりの迫力を保ったまま、自然とボールが回り始めたりする。

そうやって、試合に勝つっていうゴールに向かって、常にチームとか自分を俯瞰して見るようにしている。
でも、それっていきなり試合でできることじゃない。日々の練習、日々の生活で、どう考えているかが繋がっている。普段の生活から、イメージと計画を持って過ごして、当然起こる「思い通りにならないこと」にどう対処するかを意識する。それが、コートの上で活きてくる。

今はYouTubeを開けば、すごいプレーをたくさん見ることができる。でも、本当に大切なのは、チームのみんなが必死でパスを回して、最後に託されたそのボールを、ゴールに入れられるかどうか。それがすべて。だから、普段の練習からイメージして、イメージ通りにいかなかった時に、瞬間的にどう対応できるかを意識して、練習を積み重ねることが大切だと思っている。

今シーズン目指すのは「優勝以外に存在しない」

色々なことを考えて、話してきたけれど、僕の根本にある欲求は、昔からずっと、驚くほどシンプル。「目の前の相手に勝ちたい」ただ、それだけ。
京都に来た今の僕は、まだ何もしていない。何の結果も出していない。誰かに認めてもらっているとも思っていない。
だからこそ、まずはみんなの一番後ろからチームに入っていきたい。そして、きちんと結果を残して、チームから、そして京都という街の皆さんから、受け入れてもらえるように。今シーズン京都で目指すことはたった一つ。「優勝」

これ以外の欲求はない。
何シーズン後とかじゃない。今シーズン、このチームで優勝する。
結果はどうなるかわからない。仮に、負けて、「悔しい」という感情が湧けば、それでもいい。本気で、このシンプルな欲求にコミットするからこそ、見える景色、感じるものがあると思うから。

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岸本 隆一(きしもと りゅういち)
沖縄県出身。プロバスケットボール選手。ポジションはポイントガード。
2013年から14シーズンにわたり琉球ゴールデンキングスに在籍し、数々のタイトル獲得に貢献。2026-27シーズンより、京都ハンナリーズへ移籍。

『勝利とは何か』

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