2024.05.15
菅平(長野県上田市)✕UA(アンダーアーマー)、2024年春、学生アスリートの“聖地”が生まれ変わる。

「アンダーアーマー菅平サニアパーク」オープニングイベントには、長野県内から約200名の中高生ラグビープレーヤーが参加。「“2028信州やまなみ国スポ”ラグビー競技強化練習会」も併催された。

日本のアスリートカルチャーを象徴する合宿地のひとつ、菅平(長野県上田市)。標高1300mの準高地となる菅平には、多くの宿泊施設に加え、宿泊施設が保有する100以上のグラウンドがある。宿泊施設には、体育館やトレーニングジムも併設され、ラグビーをはじめ、陸上競技やサッカーなどのさまざまな競技チームの合宿で賑わう。

その菅平の中心に位置するのが、ラグビープレーヤーの“聖地”「菅平サニアパーク」である。太陽のサン、高原の丘に聳える太陽に近い(ニア)の2つの言葉による造語「サニア」。日本代表も使用する菅平サニアパークは、5000人収容可能な芝のメイングラウンドに加え、4つのグラウンドと陸上トラックなどを備える、まさに“聖地”である。

この菅平サニアパークが、2024年春に生まれ変わった。世界的なスポーツブランド〈アンダーアーマー〉がパートナーとなり、新たに「アンダーアーマー菅平サニアパーク」となったのだ。近隣の「アンダーアーマー菅平アリーナ」とともに、上田市とアンダーアーマーが、“スポーツの未来を創る”取り組みをスタートしたのである。

「アンダーアーマー菅平サニアパーク」オープニングイベントに参加した、(左から)アンダーアーマーを日本で展開するドーム北島義典CEO、ラグビー元日本代表の廣瀬俊朗さん、菅平を擁する上田市の土屋陽一市長。

スポーツ都市(上田市)✕アスリートを支えるUA(アンダーアーマー)

上田市とアンダーアーマーの取り組みは、単なるネーミングライツにとどまらない。“スポーツ都市”を標榜する上田市とともに、アンダーアーマーは、アスリートの環境面のサポートを中心に、イベントや人材育成などのソフト面の支援も計画している。

「私たちの企業理念は“社会価値の創造”です。スポーツを通じて社会をより良くするために、アンダーアーマーは学生アスリートの支援を上田市と行っていきます。(夏だけでなく)春合宿や冬合宿の提案や、人材交流や教育の仕組みづくり、さらに大会などを通じての人材づくり、地域づくりをサポートします」

オープニングイベントで語るのは、アンダーアーマーを日本で展開する株式会社ドームの北島義典代表取締役CEO。アスリートのためのブランドとしてスタートしたアンダーアーマーは、第2の成長期を迎えるにあたり、菅平というスポーツの“聖地”への原点回帰を宣言したのである。

●ひろせ・としあき/1981年、大阪生まれ。元ラグビーユニオン選手(15人制日本代表およびキャプテン、7人制日本代表)。2024年6月より、15人制男子日本代表チームディレクター補佐(リーダーシップ担当)就任。

オープニングイベントには、元日本代表、廣瀬俊朗さんが参加

「初めて菅平に来たのは、高校の合宿でした。それ以来、日本代表の時も含めて、数えきれないほど菅平には足を運びました。99.9%は大変な思い出ですが(笑)、ここで頑張ってきたことが、今こうして実を結んでいる、思い出深い、大好きな場所です」

「アンダーアーマー菅平サニアパーク」の式典に駆けつけた、元日本代表の廣瀬俊朗さんは“聖地”での日々をこう振り返る。引退後はテレビなどで幅広く活躍する廣瀬さんは、この日も約200名の長野県内のラグビープレーヤーを前にトークイベントを行い、その後に行われた練習会にもジョインしてくれた。

「上田市とアンダーアーマーの取り組みによって、これからは夏のラグビーや陸上の合宿だけでなく、他のシーズンも様々な取り組みの事例が生まれると思います。企業によっては、(菅平を起点にした)スポーツを通じた健康経営やチームビルディングなどの機会も増えてくると思っています」(廣瀬さん)

廣瀬さんは、アンダーアーマーを皮切りに、多くの企業が集い、上田市と町(真田町)、菅平の地域の人たちも参加する“場”としての「アンダーアーマー菅平サニアパーク」や「アンダーアーマー菅平アリーナ」の機能にも期待を寄せている。

ケガで練習に参加できなかった高校生と。「なぜ捻挫が多いのか、繰り返さない身体の使い方の話からパスをしました。パスをしながら彼が持っているものを引き出して、僕の経験のエッセンスをちょっとだけお伝えしました(笑)」

廣瀬さんが語る、菅平が秘める“聖地”のポテンシャル

「僕たちが合宿する分には、ハード面は凄く充実していると感じています。でも、もっと多くの人が楽しんでいただくためには、菅平にはリラックスできる楽しみ方があって良いかもしれません。先の話かもしれませんが、農家さんなどの生産者との交流を持つことなどで、もっとアスリートを応援して貰えると思っています」(廣瀬さん)

近年の廣瀬さんの活動は、ラグビーの枠を超え、組織論やリーダーシップなどへの提言やスポーツと地域の共創など、その活動の枠をどんどん拡げている。実は、そんな廣瀬さんも、今回まで“聖地”菅平の周辺エリアを訪れたことがなかったとか。

「昨日、初めて上田の中心街に泊まりました(笑)。いつも菅平に直行していたのですが、訪れてみると上田はとても素敵な街ですね。“上だけ(菅平)”でなく、もっと広く交流できるとも思いました」(廣瀬さん)

200mハードルでアジア最高記録などを樹立した元プロ陸上選手、秋本真吾さんのセッション。「姿勢を意識したことがなかったので、これからは凄く速く走れそうです」(参加した高校女子選手の声)。

「アンダーアーマー菅平サニアパーク」という“場”が、さまざまな交流を生みだす

「アンダーアーマー菅平サニアパーク」オープニングイベントとともに行われたのは、4年後の「信州やまなみ国スポ」に向けたラグビー強化練習会。約200名の長野県内の中高生が、4つのパートに分かれて、ディフェンス、ブレイクダウン、パスコールのトレーニング、そしてランニングレクチャーを受けた。

手作りおにぎりと豚汁のランチの後、廣瀬さんも加わってのミニゲームも急きょ組まれた。初めて一緒にプレーをするのは、住むエリアも学校も異なる、中学生と高校生たち。彼ら彼女らに共通するのはただひとつ“ラグビーへの想い”だけだ。

先ほど学んだスキルを巧みに使い、創意工夫ながらプレーに活かし、ゲームに興じる中高生たち。「アンダーアーマー菅平サニアパーク」で行われた練習会をきっかけに、さまざまな交流が生まれ拡がる“場”が生まれた瞬間だ。

菅平には、夏の合宿、冬のスキー、そして花の百名山である根子岳(ねこだけ)や日本百名山である四阿山(あずまやさん)へ、年間100万人を超える人々が訪れる。菅平の魅力を発信し、その魅力を高める“場”としての「アンダーアーマー菅平サニアパーク」と「アンダーアーマー菅平アリーナ」の可能性に期待したい。

手作りのおにぎりと豚汁の炊き出しに、笑顔の中高生たち。食休み後は、廣瀬さんからの提案で、交流をはかるミニゲームが開催された。「参加している他校の人たちに、話を聞いてみることが大切です」(廣瀬さん)

 

上田市とアンダーアーマーが取り組む、「アンダーアーマー菅平サニアパーク」および「アンダーアーマー菅平アリーナ」の活動のレポートは、今後も随時、発信していきます。

 

取材・文/大田原 透

 

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