2026.10-09
「プレッシャーを愛し、今この瞬間に集中する」―ジョーダン・スピースが7年ぶりの来日で明かした、勝利とギアの哲学
GOLF

2026年10月6日(月)、新宿の「ゴルフ5フラッグシップストア(Alpen TOKYO)」は、熱気と興奮に包まれていた。

神奈川県の横浜カントリークラブで開催されるPGAツアー「ベイカレントクラシック」へ出場するため、実に7年ぶりの来日を果たしたジョーダン・スピース選手。アンダーアーマーが主催する特別なトークショーに出演した彼は、集まった多くのファンを前に、自身の強さの源、逆境でのメンタルコントロール、そしてアスリートとしての未来について、ひと言ひと言を噛み締めるように真摯に語った。

日本のファンへの特別な想い

トークショーの幕開け、7年ぶり4度目となる来日の感想を聞かれると、スピース選手はすぐに柔らかな笑顔を浮かべた。

「日本は本当に皆さんがとても親切にしてくださるし、食べ物もおいしい。そんな日本に来ることは、毎回とても楽しみなことなんです。実は、今回プレーするコースはまだ回ったことがなかったので、昨日日本に到着してすぐに、もうコースを下見してきました。日本に来るのは4回目になりますが、今回のトリップもとにかくワクワクしています」

さらに、東京という都市の魅力や、日本のゴルフファンに対する特別なリスペクトについて、言葉を続ける。

「東京は食べ物が本当に美味しいですし、世界の都市の中でも特別な場所だと思っています。今回はトーナメントで闘うこと自体も凄く楽しみにしているんです。というのも、日本の観客の皆さんは特別だからです。球を打った時の反応も素晴らしいですし、すべての観客が本当にゲームを心から楽しまれている。ただ観るだけでなく、『ゴルフというゲームを見るためにゴルフ場に足を運ばれている』ということを肌で感じるんです。そんな素晴らしい環境でゴルフができることを、今からとても楽しみにしています」

ジョーダンスピース

今回の「ベイカレントクラシック」に出場を決めた理由について尋ねられると、彼らしい挑戦的な一面と、シーズンを見据えた戦略的な視点が見えてきた。

「実は、今週の大会には何人かの親しい友人も参加するんです。また、日本のコースの素晴らしさや、この大会自体の評判が以前から凄く良いことも知っていました。そんなレベルの高い大会で、自分の今現在のスキルを試してみたいと思ったのが大きな理由です。
そして、この大会が終わると1月までオフシーズンに入ります。このタイミングで試合に出ることは、オフの期間に自分が何をすべきか、どのような準備をしていくべきなのかを冷静に考えていくための、非常に良い機会になると信じています」

変化したライフスタイルと、変わらぬ「世界一」への渇望

これまで数々の輝かしい実績を残してきたスピース選手。プロゴルファーとして、人生においていま最も大切にしていることは何か。
その問いに対する答えには、一人の父親としての素顔と、王者の執念が同居したものだった。

「私がプロとしてのキャリアを始めたときには、まだ家族がいませんでした。でも、今は違います。私には妻がいて、3人の子供がいます。最近は、こういうトーナメントに出場するときにも、家族と一緒にみんなで移動しているんです。そういう意味では、私の生活は本当に大きく変わりました。ただ、自分の中で『やはりもう一度世界一になりたい』という目標は、当時からまったく変わっていません。そのために犠牲にしなければならない部分もたくさんありますが、これは私にとって絶対に変えられない目標です。
そしてもう一つは、家族との幸せな時間をしっかりと過ごすこと。この2つを両立させることはとても難しいチャレンジですが、これからも全力で挑んでいきたいと思っています」

ミスをしたら「金魚になる」プレッシャー結果に変えるメンタリティ

スピース選手のキャリアを語る上で、避けて通れないのが数々の劇的な大逆転劇。これまでで最も印象に残っている出来事について、彼は迷わず「あの夏」を挙げた。

「どうしても忘れられないのが2017年の全英オープンでチャンピオンを勝ち取った時です。この大会で、私のゴルフスタイルというものが確立されたのだと思っています。
最終日は本当に苦労しました。スタートから本当に調子が良くなくて、苦しいゴルフが続いていたんです。それを最後にひっくり返すことができたのは、自分自身の能力や技術、そういったものを最後の最後まで信じ抜くことができたからだと思っています。
決して、ワクワクしながら楽しくプレーをしていたわけではありません。でも、それこそが僕自身のプレーの本質なのかなと思っています。
おそらく、あのときのプレーを見た世界中の皆さんも、それこそが私のスタイルだと思っていただいているのではないでしょうか」

スピース選手は、経験の大切さと、心の持ちようを語った。

「プレッシャーに対抗し、それと上手く付き合っていくには、やはり『経験』が何よりも大きいと思います。コースを回る中で、様々な場面でプレッシャーを感じる経験。そして、実際にそれに対処して乗り越えた経験。その積み重ねによって、人は強くなっていきますし、プレッシャーそのものに慣れていくものだと思っています。
もう一つは、自分が強いプレッシャーにさらされたときに、一歩引いてこう考えるようにしているんです。『自分は今、子供のころからずっとやりたかったことをやれているんだ。これはただの苦しい試合ではなく、自分が望んで、憧れて、自ら立っている舞台なんだ』と。そう思うことで、プレッシャーをポジティブなエネルギーに変えていくことができます。始めたころの原点に立ち返る、という部分もありますね」

ゴルフはミスを避けて通れないスポーツ。手痛いミスをした後、どのように心を切り替えるのか。その回答にも、彼の人柄があふれていた。

「私は、プレーが良いときも悪いときも、まずは『深呼吸』をするようにしています。そしてもう一つは、金魚のように記憶を短くすることです。つまり、すべてを忘れてしまうということです。
良いことも悪いことも、ラウンド中にはたくさん起こります。けれど、次のホールに立ったときには、前のホールのことは一切頭の中に置かない。
とにかく『今、この瞬間にやらなければならないこと』だけに集中する。恐らく私は、その切り替えが得意なんだと思います。立ち直る能力というか、とにかく今やるべきことに頭を100%集中させるんです」

次世代へのアドバイスと、若き岩井光太選手への金言

「これからプロゴルファーを目指す若い世代へ、どんなアドバイスを送るか」という質問に対し、彼はシンプルでありながら極めて本質的なメッセージを投げかけた。

「これはとてもよく聞かれる質問ですが、私はいつも決まって『とにかくコースに出てプレーしなさい』とアドバイスしています。
今はテクノロジーの発展によって、シミュレーターや素晴らしいドライビングレンジ、パッティングの練習場などがたくさんありますが、実際のコースに出るというのはやはり全く別物だと思っています。コースに出て、その場その場でプレーして、どうやってスコアを良くしていくかという実戦をやり続けることが何よりも大事です。
初めてのコースだったら、自分が今の実力でどのくらいのスコアで回れるかを試してみる。そうやって何度も挑戦して、コースに慣れていく。プロの選手として、これが一番大切なプロセスです」

トークショーの後半には、この秋にプロテストに合格し、プロゴルファーとしての第一歩を踏み出した21歳のアンダーアーマー契約アスリート、岩井康太選手がゲストとして登壇。岩井選手から、世界の第一線で戦い続けるスピース選手へ2つの質問が投げかけられました。

「成長するために必要なこと」

「一つ目は、『他のゴルファーがどのような練習をしているのか、あるいはどういうプレーをしているのかをよく見るようにすること』です。
二つ目は、長い間プロとしてゴルフを続けていくために、『どういう身体づくりをしたらいいのか、あるいはゴルフをした後にどうやってリカバリーをしたらよいのか』を学ぶこと。同じような若い選手や、経験のある先輩アスリートから、貪欲にどんどん学び取っていくのが良いと思うよ」

続いて、「厳しいプロの世界で戦い続けるために、最も身につけておいた方が良いもの」を問われると、スピース選手はより具体的な2つのポイントを挙げました。

「身につけるべきものは2つあります。1つ目は『コースマネジメント』です。とにかく確実に、どの方向のどのポジションにボールをきちんと落としていくかを考え、決断する場面。そして、どの場面でリスクを背負って賭けに出るか。これを、18ホール全体でどう管理していくのかという戦略が凄く大事になってきます。
私が大学でゴルフをやっていた頃と今とでは、プロの環境も大きく変わってきています。グリーンは信じられないほど速くなっていますし、コース全体の難易度も上がっている。だからこそ、絶対にミスが許されない安全な場面なのか、あるいはリスクを冒してでも攻めるべきなのかの判断を、よく考えてプレーすることが重要です。
もう1つは、やはり『パット』です。ゴルフには色々なスイングがありますが、パットこそが最も重要な要素だと思っています。どんなにショットが上手くいかないホールも、パット1本でスコアが劇的に救われることもありますし、逆にパット次第で崩れてしまうこともあります。だからこそ、とにかくパットの練習をたくさんするということが大切です」

これに対し、岩井選手は「PGAで活躍している身体の大きな選手たちに負けないよう、自分もしっかりトレーニングをして身体を大きくしたい。そして何よりもパットの練習を徹底的に行い、コースに出てメリハリのあるマネジメントを実践していきたい」と決意を語った。

ギアに求める究極の基準「ゼロ・リストラクション」

話は、ゴルファーを支える重要な相棒である「ギア」へと移る。スピース選手がギア選びで最も大切にしている哲学とは何なのか。

「一番大切なのは『ゼロ・リストラクション(Zero Distraction)』、つまりスイングにおいて一切制限されない、邪魔されないことです。もちろんフィット感も重要ですし、着用したときに窮屈に感じたくはありません。そして同時に、見た目が格好良く見えるということもアスリートとして重要です。
私は10年以上アンダーアーマーを使っていますが、本当に動きやすくて、身体に完璧にフィットしてくれている。そして何より快適です。ラウンドしている最中に、自分がウェアを着ているという事実に全く意識がいかない。だからこそ、ゴルフのゲームだけに100%集中することができるんです。
もう一つは、全英オープンのように凄く天気が悪くて過酷なとき。こういうときは、自分の身体がしっかりと暖かい状態を保たなければなりません。逆にものすごく暑いときには、ウェアによってなるべく涼しく感じられるものを着たい。アスリートとして、こうした厳しい環境に耐えうる着心地と、格好良さの両方を満たしてくれるウェアが必要不可欠なんです」

ゴルファーの足元を支えるシューズについてのこだわりも熱を帯びる。

「今履いているシューズは、本当に様々なテストを重ねて、毎年さらに良いものへと進化しています。実はゴルファーは、1日に10〜15kmほど歩くんです。それも連続して何日も、タフな斜面を繰り返し歩かなければなりません。
なので、シューズというのはプレーのパフォーマンスに直結する非常に重要なギアだと思っています。スイングの瞬間に体重が片方の足からもう片方の足へ移動したり、激しい動きの中で、自分のスイングを土台から助けてくれるような機能を持っている必要があります。アンダーアーマーのシューズは、テストを重ねるたびに毎年素晴らしい進化を遂げていることを実感しています」

さらに、アンダーアーマーの人気アイテムである「ステルスフォーム キャップ」の開発秘話にも触れました。世界で一番初めにこのキャップを被ったのが、他ならぬスピース選手です。

「アンダーアーマーのCEOであるケビン・プランクが、私の元に『この新しいキャップはどう思う?』と持ってきてくれたんです。彼はその場で、そのキャップを両手でくしゃくしゃに潰して見せ、それをもう一度被ってみせました。それでも、キャップの形が全く変わらずに頭に綺麗にフィットしていたんです。

ゴルフ中には、キャップを脱いでポケットに押し込むような場面もありますが、これなら型崩れしないし、常に最高のフィット感が保たれます。スポーツブラの開発チームと一緒に、最も心地良いものを作ろうと共に開発した製品なんです。実際に触ってもらえば分かりますが、何をしてもくしゃくしゃにならないし、いつでも頭にフィットする。本当に素晴らしいキャップが出来上がりました」

パットの極意とワークアウト

会場に集まったファンからの質問にも、スピース選手は一つずつ丁寧に答えてくれた。

まずは「ショートパットとロングパットで、最も重要視しているポイント」について。

「私は、パッティングに入るとき、まず始めに『自分がどういうスピードでボールを転がそうか』というスピードを考えます。次に、そのスピードに対して『どういうラインを通すか』を考えます。ストロークの技術自体も大切ですが、まずはこの2つのステップが凄く大切。スピードをイメージして、ラインを決める。最後に、ボールがカップに入るまでの軌道をしっかりとビジュアルとしてイメージしてから、実際のストロークに入る。これが私の極意です」

続いて、日々のトレーニングやワークアウトの頻度について。

「トーナメント期間中は、まずジムに行って30分程度、あらかじめ決めているメニューに取り組みます。その後、1時間ほどを使って、パットの練習、ショットの練習、そして最後にもう一度パットの練習をします。これがトーナメント中の私の毎日のルーティーンです。
今のように試合がないオフシーズンの場合は、普段からもう少しハードなワークアウトをやっています。そして、ハードなワークアウトと同様に大切なのは、『身体をどのくらいの頻度で休ませ、リカバリーにあてられるか』です。ワークアウトをハードにしている日はゴルフの練習を軽くし、逆にゴルフの練習を増やしている日はワークアウトを減らすなど、常にトレーニングとリカバリーのバランスを細かく見てコントロールしています」

ウェルカム TEAM UA。そして日本のファンへ

イベントの最後には、岩井プロから「これからプロとして試合に出る。サポートしていただいているすべての方に感謝の気持ちを持って、目の前のことに精一杯向かっていきたい。いつか、ジョーダン・スピース選手を越えていけるような選手になります」と、力強い抱負が語られ、それを受けたスピース選手は、最高の笑顔で岩井選手へメッセージを送った。

「まずはプロテスト合格、本当におめでとう。そして、チームUAへようこそ!君のこれからの大活躍を、心から楽しみにしているよ」

そして最後に、日本のファンへ向けて、心温まる感謝のメッセージでイベントを締めくくった。

「日本でプレーすることは、私にとって本当に大きな楽しみです。妻も『いっそのこと日本に引っ越して暮らしたい!』と言うくらい、この日本という国を楽しみにしています。日本のファンは温かく、本当に最高です。私たちは日本が大好きなので、これからもたくさん日本に足を運びたいと思っています。これからも応援よろしくお願いします!」

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